真相

マルコ福音書6.16-29

バプテスマのヨハネはヘロデ王に捕らえられ処刑された。マルコはその真相を詳しく報告している。ヨハネはヘロデに対しヘロディアとの婚姻問題について批判した。ヘロデはその批判が動乱につながることを恐れてヨハネを捕らえた。権力はそれに批判的な勢力を口封じする。

次にヘロデはヘロディアの娘への褒美として、願えば国の半分でもやろうと約束した。国はヘロデの私物ではない。権力はその力を私物化する。

娘は母の提案でヨハネの首を要求したが、実はこれがヨハネ処刑の直接の理由ではない。ヘロデは自身の誕生日に招いた来賓の手前、その要求を退けることが出来なかった。ヨハネが殺された直接の理由は王の面目である。ヨハネはヘロデの面目の犠牲となった。以上が真相であるがこれは昔話しではすまされない。

菅内閣は政府に批判的な6名を日本学術会議の推薦名簿から除外し口封じした。森友学園、加計学園問題は権力の私物化に他ならない。安倍総理は自身や妻に関する不都合な記録を改ざんさせた。権力者の面目を守るためにその作業に携わった職員が尊い命を絶った。

ヨハネ処刑の真相は今日の問題である。しかしそれにしても内閣支持率が不支持を大きく上回っているのは何故か。権力の横暴よりも携帯電話料金の値下げやGOTOのポイントが関心事なのか。民主主義の弱点とも言えるが、人間は飴ちゃんをしゃぶらされると批判しなくなる。しかし宗教はそうであってはならない。腹が満たされようとも、空腹であろうとも、権力に対する見張りの使命はそれに左右されてはならない。

私たちはこの河川敷で国の政策であるスーパー堤防事業と対峙してきた。しかしそれはこの河川敷に生きる人々と共に生きる必然であった。権力批判が目的化されるとき、それは腹の空き具合に左右される。権力批判は私たちの目的ではない。ただそこに居る隣人と共に生きる必然のためなら飴ちゃんを差し出されようと、自分の腹の具合がどうであれそれに左右されることはない。私たちはそのことをこのヨルダン寮で経験したのである。

孫 裕久

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