先週、YMCA専門学校の帰り道、ふと金木犀の香りがした。
香りは何かを告げ、何かを思い起こさせる。季節を告げ、そして記
中学二年の夏、私は大阪市から和泉市へ引っ越した。
新居の横には、目立たぬ平凡な街路樹が植えられていた。
それが金木犀という木であることを知ったのは、秋になってのこと
町工場が立ち並び、油の匂いがする街で育った私には、その香りと
香りというのは、忘れやすいものだと思う。
どんなに強く感じても、時間が経つと、たちまち消えてしまう。
しかし、ひとたびその香りに再会すると、瞬時に遠い過去が蘇る。
昔の曲を聴くと、懐かしさとともに当時の風景や思い出がよみがえ
香りにもそんな不思議な力があるように思う。
香りとは、嗅覚だけで感じ取るものではなく、心が覚えている感覚
目には見えず、言葉にもできないけれど、その香りは確かに記憶の
今を生きる私と、かつての私を静かに結びつけてくれる。
福音とは香りのようなものかもしれない。
出会いの中で放たれたその香りは、しばらく忘れられていても、
やがて誰かの心の中でふと芽を出す時がくる。
キリスト教に興味のない学生たちへの講義を終えた帰り道。
足取りの重い私に、金木犀の香りが、そう囁いてくれた。
香(か)のしるべ
また巡りきて 立ち止まる
あの日のわれと あの日のきみを